こんにちは。コットン生地のエコバッグ・トートバッグ限定でオリジナルプリントをしている専門店です。
当店のシルクプリント価格表には、版代の欄の下に小さな1行。
「版の保存期間は半年間です」
作成ガイドでも「版下を半年間保存しているので、追加注文は割引に」と何度か書いてきました。
ただ、その版がどんな物なのかは、あまりお話ししていません。
半年という期間が、ご注文の進め方にどう関わるのか。
製版の現場の写真と、実際の追加生産の事例を並べてご案内します。

版の土台づくり。アルミの枠に紗(しゃ)を張っていきます
目次
1. 「版」と「版下」は別のもの
まず言葉の整理から。
版下は、お客様のデザインから作る製版用のデータのこと。版は、そのデータを焼き付けた、刷るための道具を指します。

版下データの作成から、インクの調合まで
シルクプリントのページには、作業の順番をこう書いています。お客様のデザインから製版機械用データを作成し、製版機械で版を作成。指定いただいたプリントカラーをインクの調合表で確認して、インクも機械で調合する流れです。
イラストレーターのアウトラインデータを原寸で入稿いただければ、そのまま完全版下として使えます。
画像や手書きのイラストからでも、当店でトレースしてデータにできます(有償)。
紗(しゃ)とシルクスクリーン
紗は、版の枠に張る網のこと。昔はこの網にシルクが使われていたことから、シルクスクリーンプリントと呼ばれるようになりました。デザインの細かさやインクの種類に合わせてメッシュを4種類から選び、ラメの粒子が大きいグリッターには少し目の粗い紗を使います。
2. 版はアルミ枠の現物
版はデータではありません。
アルミの枠に紗を張った、手で持てる現物です。
作り方は11工程。アルミの枠で土台を作り、紗を機械でテンションをかけて張り、重石をのせて接着剤を塗って乾燥。枠に沿って紗を切り取ると、土台ができあがります。

感光乳剤を塗って、デザインを焼き付ける
ここからがデザインの出番。
感光乳剤を塗り、製版機械でデザインを描き、強い光(紫外線)で焼き付けます。緑だった部分が青く固まったら、焼付け完了のサイン。

水につけるとデザインの部分だけが抜ける
水につけると、デザインの部分だけがスルスルと溶けてメッシュが現れます。
そこがインクの通り道。最後に乾燥させ、まわりをテープで保護して完成です。
特急仕上げでも、この11工程に1日半かかります。年賀状でよく使われたプリントゴッコに近い仕組みですが、実際は高精度で繊細、しかも大がかりな作業。
3. 1色につき1版、色数で納期も変わる
版は、刷る色ごとに1版ずつ必要です。
2色のデザインなら2版、3色なら3版。
シルクプリントは基本1色から3色までで、色と色が接するデザインは2色刷りまで。色同士が接しなければ3色刷りも使えます。
色数は納期にも響きます。
1色刷りは、完全版下原稿の校了と正式オーダーのご入金から通常中11営業日。2色刷り以上になると通常中22営業日で、版が増えるぶん日数も要ります。
2色以上の多色刷りでは、ある程度の版ズレも出ます。色ごとに別の版を重ねて刷るためで、オーダー規約にも書いている点。
大きさにも枠があります。価格表の版サイズはH33cm×W33cm以内で、バッグの大きさによっては大型版になることも。
工場では、一般的なサイズの版なら横に2つ並べ、キングサイズは1台に1つだけ載せます。
版サイズの中であれば、プリントの面積に関係なく同じ料金。ワンポイントでも大きなロゴでも、1色なら版は1つです。

版の上からスキージでインクを刷り込む
刷る日は、本番の前に必ず何枚か試し刷り。
しわが寄らないようバッグをプリント機械にセットし、スキージというヘラで版の上からインクを刷り込みます。
スポット乾燥機で一度乾かしたら、元の位置に戻してもう一刷り。職人が仕上がりを目で確かめ、大型乾燥機のベルトコンベアーに載せます。
版を作るのには時間がかかるのに、刷りはじめると早い。この落差がシルクプリントらしいところ。
4. 半年間という保存期間
作った版は、刷り終えたあとも保存しています。
シルクプリント価格表の表記は「版の保存期間は半年間です」。
製版は、シルクプリントでいちばん手間のかかる部分。シルクプリントのページにも「版を作るのに多くの時間と作業が必要ですが、プリントは効率よく早くおこなえます」と書きました。
初期のコストは版にかかり、1枚ごとのプリント費用は安い。
インクが安価で、1枚を刷る時間が短いからです。
その版が、半年のあいだ残っている。
同じデザインをもう一度刷るなら、いちばん手間のかかる部分をやり直さずに済む、ということになります。
半年を過ぎた版は、廃棄します。
それ以降に同じデザインを刷る時は、版を作るところからやり直し。
5. 追加注文で引き継がれるもの
プリント方法の選び方の記事には、こう書きました。「版代は最初だけの出費で、当店では版下を半年間保存しているため、追加注文では割引になります」。
実際の見積りを1件。
長野県のお客様の、キャンバストート(S)へのシルクプリント追加生産です。
枚数は100枚、刷り色は3色。ご依頼オプションは「完全版下があるのでそのままプリントしたい」で、製版代の欄は合計ゼロでした。3色ぶんの版を作り直していない、という見積り。
追加のご注文は、前回のお見積りメールの続きに返信いただくだけ。
ひとつ条件があり、シルクプリントの追加生産は初回オーダーの数量以上でお願いしています。
通常のシルクプリントは100枚からの受付で、印刷費は200枚が最低計算ロット。数量が多いほど割引が効く方式なので、追加も「まとまった枚数で」が前提になります。
もうひとつ、オーダー規約に書いていること。
追加生産は、バッグ本体の生産ロットや印刷環境の違いがあるため、前回とは仕上がりが異なります。厳密な基準がある時は、事前に無地サンプルの購入か色校正で確かめてください。
シルクプリントの追加注文の前に、確かめる4点
- 前回の製版から半年以内か(版の保存期間は半年間。過ぎた版は廃棄)
- デザインは前回と同じか(デザイン原稿を変えると版は作り直し)
- 枚数は初回オーダーの数量以上か
- 印刷色を変えるなら、DICかPANTONEのカラーコードを用意したか
6. 1つの版を使い切る
半年の保存とは別に、1回のご注文の中で版を使い回した例もあります。
東京都のお客様は、コットン(M)のナチュラル200枚とブラック200枚、合わせて400枚をシルクプリントで作られました。
ナチュラルには黒文字、ブラックには白文字。表と裏の両面に、横24cm×縦10cmの同じデザインです。
この見積りの製版代は、W33×H33cm以内の一般サイズが1版だけ。生地の色もインクの色も2種類で、刷る面は表と裏。それでも版は1つで済んでいます。
黒い生地に白を刷るほうには、下地刷りの工程が1つ加わっていました。濃い色の生地を選ぶ時は、その分も見積りに入ります。

仕上がりを目で確かめて、大型乾燥機へ
色とデザインでは、版の扱いが違います。
印刷色の変更は、DICかPANTONEのカラーコードを指示し直すだけ(RGBやCMYKの値では指定できません)。デザイン原稿を変える場合は、版を新たに作り直すことになり、版代と製版の期間が別にかかります。
年号やイベント名のように毎回変わる要素を入れるかどうかは、最初に考えておきたいところ。
線の太さの目安は、塗りが2pt(0.7mm)以上、抜きが4pt(1.4mm)以上。細かい数字は名入れ印刷データ作成の数値目安にまとめました。
7. 試作だけ先に作る、最初の枚数を決める
色や仕上がりを確かめたい時は、色校正(試作)を。コースは2つあります。
ひとつは、本生産の前に試作品を1点お届けするコース。7営業日ほどで本生産用の版を作り、実際のトートバッグに刷ってお送りします。
仕上がりに問題がなければ、量産のご指示をメールで返信いただく流れ。
校正後の色の調整変更は無料ですが、もう一度校正を取る場合は校正費が都度かかります。
もうひとつが、試作のみのコース。
2枚だけ作ってお届けし、本生産に進むかどうかはそのあとで決められます。
試作と同じ内容で本生産に進むと、版代と印刷サービス料金のぶんがお値引き。ここにも「版の保存期間は半年間となります」と添えています。
試作で作った版が、半年のあいだ本生産を待っている。
枚数のほうは、少し丁寧に決めたいところ。
シルクプリントは大口で安価に作る方式なので、バッグ本体の検品は使用に支障がないレベルの簡易なものになります。印刷の不具合以外では交換ができません。
絶対に必要な数があるなら、必要数に少し足した枚数でのオーダーをお願いしています。
正式オーダーのあとは数量の変更ができず、生産の途中で足したくなった分は別の新しいオーダーに。
半年をまたぎそうな追加のご予定があれば、お見積りの時にひとこと添えてください。
8. 版のいらない方式でも、データは残る
染色プリントには版がありません。
版代がかからないので、少ない枚数の追加はこちらの出番。
大阪府IM様は、ショップのロゴマークを入れたA4コットンバッグを50枚、追加で作られました。
オーガニック品を扱うお店で、届いたバッグは「ショップのお客様にも大変喜んで頂いております」とのこと。
この時の見積りには「前回印刷データがございますので少しお安くなっております」と添えています。
A4コットンバッグは本体約W260×H330mmのマチなしで、印刷範囲は最大W160×H220mm。持ち手は幅約25mm、長さ約280mmの手提げ用です。
神奈川県T中学校PTA様は、毎年の記念バッグ。
厚手コットンバッグヘビーウェイト(L)に、ワンポイントで団体のキャラクターマークを染色プリントされています。この時の追加は10枚でした。
お便りには「担当が毎年変わり」とありましたが、前のデザインはそのまま使えます。当店からのお返事は「デザインデータは保存しておりますので、またのリピート生産もお待ちしております」。
バッグは、お世話になった方々へ贈呈されるそうです。
ここまでの追加生産を並べると、こうなります。
| お客様 | バッグ | 方式 | 追加 | 見積りの記載 |
|---|---|---|---|---|
| 長野県のお客様 | キャンバストート(S) | シルクプリント3色 | 100枚 | 完全版下あり。製版代は合計ゼロ |
| 大阪府IM様 | A4コットンバッグ | 染色プリント | 50枚 | 前回の印刷データがあるので少しお安く |
| 神奈川県T中学校PTA様 | 厚手コットンバッグヘビーウェイト(L) | 染色プリント | 10枚 | 完全版下あり。初期デザインのままプリント |
版の扱いを方式ごとに表にしました。色を付けた行がシルクプリント。
| 方式 | 版 | 長所と制約(シルクプリントのページの比較表から) |
|---|---|---|
| 染色プリント | なし | 少量作成で安価。黒色・濃い色の生地にはプリント不可 |
| シルクプリント | 1色につき1版。保存期間は半年間 | 大量作成で安価。版代が必須 |
| フィルムプリント | DIGITAL版(10枚から無料) | 少量で安価。用意された単色カラーのみ |
| 転写プリント | DIGITAL版(10枚から無料) | 少量で安価。絵柄の周囲に余白枠がつく |
シルクプリントは白色のプリントができ、カラー生地にも刷れます。メタリックの光沢がある金色と銀色を出せるのも、インクを生地にのせるこの方式ならでは。
届いたあとの扱いにも、方式の差が出ます。
シルクプリントは洗濯に強く、色落ちや色あせが起こりにくい方式。インクを生地に直接刷り込み、高温の熱源と大型乾燥機を通して仕上げています。
繰り返し洗って長く使うバッグほど、シルクプリント向き。
オーダー規約には、染色・フィルム・転写プリントはお届け時にプレス跡が残ると書きました。時間の経過で薄くなり、スチームや洗濯で完全に取れるものです。
フィルムプリントと転写プリントは、生地の収縮にプリント面が追いつかないので乾燥機は避け、洗濯ネットを使ってください。
どの方式が合うかは、デザインと枚数で変わってきます。染色プリントとシルクプリントのコスト比較表も用意しました。
お見積りでは、用途に合ういちばん安価な方法をこちらからご提案しています。
9. まとめ
版は、アルミ枠に紗を張ってデザインを焼き付けた現物。1色につき1版で、作るのに11工程。
色を変えるだけなら版はそのまま、デザインを変えるなら作り直し。
同じデザインであれば、色違いのバッグにも、表と裏にも、1つの版で刷れます。
その版を半年間保存しているのは、同じデザインの追加注文で製版をやり直さずに済ませるためです。
最初は必要な分に少し足して作り、足りなくなったら半年のうちに足す。そういう進め方もできます。
枚数が読めない時ほど、お見積りの段階でご相談ください。
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