こんにちは。コットン生地のエコバッグ・トートバッグ限定でオリジナルプリントをしている専門店です。
染色プリントのページには「出来ないこと」という欄があり、最初の1行はこうです。
「白色のプリントができません」
写真もグラデーションもそのまま刷れる方式なのに、白だけは出せない。
不思議に聞こえますが、仕組みを見ると理由はすぐ分かります。
白が要るデザインをどう作るか、白を刷りたい時はどの方式に替えるか。
当店のページに載せている拡大写真と、実際のお見積り事例を使ってご案内します。

染色プリントの作例と印刷面の拡大
生成りの生地に写真を刷った例(どちらもTシャツ)
目次
1. 白の染料が入っていない
染色プリントは、染料を生地に染みこませて色を付ける方式です。
使う染料の原色は4つ。
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック。
この4色の中に、白はありません。
家庭や職場のカラープリンターも、ふつうは同じ4色の組み合わせ。
白い紙に刷るので、白のインクが要らないのです。
写真の白い雲も、文字のまわりの余白も、何も刷られていない紙の色。染色プリントでは、その紙の役を生地が引き受けます。
CMYKとは
シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のこと。染色プリントのページには、このインク原色で刷ったロゴの作例を載せていて、EとCの文字がとても鮮やかに出ています。ご入稿データのほうは、カラーモードをRGBで作成してください。
2. 生地の色が「白」の役をする
染色プリントのページには、仕組みをこう書いています。
「生地を白色と見立てて、CMYK色染料の粒子を生地に染みこませます」。
拡大写真を見ると、言葉どおりの様子です。
生成りの生地に写真を刷り、葉の色が薄い部分をクローズアップしたのが右の1枚。細かい色の粒が織り目に染みこんでいて、粒と粒のあいだには生地がそのまま見えています。
色が濃いところは粒がびっしり、薄いところはまばら。
粒の密度で濃淡を作るので、何も刷らない場所がいちばん明るい色になります。
その「いちばん明るい色」が、白い生地なら白。生成りの生地なら生成りです。
インクが生地の上にのらないぶん、手ざわりも変わりません。
シルクプリントのような浮きだしがなく、プリント面のひび割れも起きない方式。
3. 生成りのバッグでは、白は生成りになる
事例集でフルカラー印刷のお見積りを見ていくと、バッグの色はほとんどがナチュラル。
染色プリントの相手は、たいてい生成りのコットン生地です。
データの上で白く抜いた文字や、写真の中の白いシャツは、仕上がりでは生成りの色に。
入稿データの注意書きにも「生地を白色と見立てますので生成り生地や、カラー生地への印刷は色味をご考慮ください」と書きました。
真っ白を期待していると、ここで食い違います。
生成りのやわらかい色を白の代わりとして最初からデザインに組みこめば、刷らない部分まで絵の一部。
生地の色ごとに、染色プリントの「白」がどうなるかを表にしました。色を付けた行が生成り。
| 生地の色 | 染色プリントで起きること | 進め方 |
|---|---|---|
| 生成り(ナチュラル) | 刷らない部分が生成りの色になる | 色味は生成りのぶんを見込んでデータを作る |
| 薄い色のカラー生地 | 生地の色と染料が混ざった色になる | 黒のプリントならハッキリ出る |
| 濃い色・黒の生地 | 生地より薄い染料は打ち消される | シルクプリントか転写プリントへ |
4. 薄い色ほど、生地が勝つ
白が無いことの影響は、白そのもの以外にも出てきます。
代表が、薄い色のベタ塗り。
薄いピンクを刷る時、染料はマゼンタが主で、イエローとシアンが少し。
ベースにしているのは、生地の白です。
色が薄くなるほど生地の面が多く露出し、染料の粒子感が目立ってくる。
当店のページでは、薄いピンクと黄緑の2例を拡大写真つきで載せました。

薄いピンクの文字を最大まで拡大。粒のあいだに生地が見えます
黄緑は、ベースにイエローをベタ塗りし、マゼンタとシアンを混ぜて作る色。
この2色は特に粒子感が出やすく、色指定の時に気をつけたいところです。
原色系の濃い色のベタ塗りは、とてもクリアーに出ます。
ベタ塗りにはできるだけ濃い色を、というのがページに書いているお願い。
中間色や薄い色は、印刷が薄くなりすぎたり、ボカシ気味になったりすることも。色の成分が少ないと生地のほうが勝ち、輪郭が十分に出ないためです。
もう1点。染色プリントでは、DICやPANTONEのカラーコードによる正確な色指定ができません。
ご入稿データの色をそのまま出力する「出たなり」の印刷で、粒子の密度や生地の色の状態によって色が動くからです。
コーポレートカラーのように色の基準がある時は、カラーコードで指定できるシルクプリントをご指定ください。
5. 濃い色の生地に刷れない理由
同じ理屈で、濃い色の生地も相手にできません。
染料は生地を染めるものなので、元の生地の色より薄い染料は打ち消されてしまいます。
絵の具を重ねるのと同じで、色は足すほど暗くなる一方。
黒い生地の上に黄色を染めても、黄色には見えません。
カラー生地でも、薄い色なら刷れます。ただ、仕上がりは生地の色と染料が混ざった色。
黒のプリントだけは、ハッキリとした黒で出ます。
シルクプリントのページの比較表でも、染色プリントの制約は「黒色・濃い色生地にプリント不可能」の1行。
素材の条件もあります。
ポリエステルのように染料が染みこまない生地には、色に関係なくプリントできません。
6. 白を刷りたい時は、方式を替える
白いロゴや白い文字が要る時は、染色プリントを離れます。
シルクプリントは白色のプリントができ、カラー生地にも刷れる方式。
インクが生地の上にのるので、染みこませる染色プリントとは色の出方が違います。
東京都のお客様は、厚手コットンヘビーウェイト(M)のナイトブラックに、白のイラストと文字をシルクプリントで。
印刷の大きさは横16cm×縦20cm、刷り色は白の1色で、版は一般サイズが1つでした。
この時は50枚のお見積り。いまの通常のシルクプリントは、100枚からの受付です。
別の東京都のお客様は、コットン(M)のナチュラルに黒文字を200枚、ブラックに白文字を200枚。
黒地に白を刷るほうには、下地刷りの工程が1つ加わっています。
コスト比較表にも「カラー素材生地へのプリントは二度刷りが必要」と書きました。黒のトートバッグを選ぶ時は、そのぶんも見積りに入ります。
金色や銀色も、シルクプリントなら実際に光沢のあるインクで刷れます。
フルカラーの染色プリントでできるのは、グラデーションを使った擬似的なメタリック表現まで。
カラー生地にシルクプリント、という組み合わせは配布用の事例にも。
長崎県のお客様は、まち歩きイベントの参加者に配るコットンバッグ(M)を、ピンク400枚、ライトブルー300枚、オレンジ300枚の合計1,000枚でお見積り。3色の生地に同じ版・同じ色で刷るので、版は1つです。
濃い色の生地に写真やイラストを載せたい時の候補が、転写プリント。
専用シートに印刷してから生地に転写する方式で、ページの見出しは「白地を生かすのがカッコイイ」です。
全てのエコバッグ素材にプリントでき、染色プリントでは不可能な濃い色のバッグや再生ポリエステル生地にも対応。
製版が要らないので、少量でも作れます。
プリント面には光沢感があり、写真まで高精細。
図柄のエッジが複雑な場合は白枠が必要で、その白枠を生かしたワッペン風のデザインも作れます。
フィルムプリントも白色のプリントができる方式ですが、生産設備リニューアルのため、いまはオーダーを停止しています。
4つの方式を、白と生地の色で並べました。色を付けた行が染色プリント。
| 方式 | 白 | 濃い色の生地 | 写真 | 版 |
|---|---|---|---|---|
| 染色プリント | 刷れない | プリント不可 | 得意 | なし |
| シルクプリント | 刷れる | 刷れる(二度刷り) | 写真的な表現は不可(網点処理は可能) | 1色につき1版 |
| 転写プリント | 白地・白枠を生かす | 刷れる | 高精細 | 製版は不要 |
| フィルムプリント | 刷れる | 刷れる | 不可 | 製版は不要(現在オーダー停止中) |
7. 白がないぶん、得意なこと
出来ないことを先に並べました。得意なことは、その裏返し。
単色でもフルカラーの写真でも、プリントの料金は同じ。
版を作らず、バッグへダイレクトに染色できる業務用の専用マシーンで刷るからです。
静岡県のお客様は、キャンバストート(M)のナチュラル500枚で、2通りのお見積りを取られました。
赤と黒の2色ならシルクプリント、4色フルカラーなら染色プリント。印刷は両面で、大きさはどちらも横24cm×縦20cm。
シルクプリントの案では、赤と黒の版が表面用と裏面用で合わせて4つ。
染色プリントの案に、製版代の欄はありません。
色数が増えても、版は増えない。色ごとに版を作るシルクプリントとの違いは、そこです。

染色プリントの工程。プレス、データ作成、プリント、圧着
工程は4つ。
最初に高温プレス機で1枚ずつプレスして印刷面を整え、お客様のデザインから印刷データを作成。専用マシーンにバッグをセットしてデータを流しこむと、少しずつプリントが進みます。
刷り終えたら、もう一度高温プレス機で圧着して完成。
版を押すシルクプリントと違い、プリントそのものに時間がかかる方式。染料が少し高価なこともあり、大きな印刷範囲で5,000枚といった大量生産ではコストがかさみます。
反対に、少ない枚数は得意。対応するバッグなら、ごく少量の10枚から受け付けています(少量の時は単位割れの費用が別に必要)。
納期は、レイアウトイメージの確認と正式オーダーのご入金から通常中11営業日。500枚を超える場合は、別途お知らせする形です。
染みこませる方式なので、洗濯にも強い。
米国AATCC2A洗濯堅牢度試験で高い洗濯堅牢度が実証されていて、繊維製品の国際的な安全規格エコテックス規格100では、最も厳しい製品分類Iを取得しています。

洗濯堅牢度試験の結果(染色プリントのページから)
8. データの目安と、試作
入稿データは、特殊な形でなければほとんどの画像でプリントできます。
スマートフォンで撮った写真も、そのまま使えるデータ。
画像の解像度は150dpi以上360dpi以下で、360dpiが標準。ファイル容量は20MB以内に。
印刷のクオリティは、いただいたデータ相応になります。
線と文字の目安(黒100%の単色で刷る場合)
- 線は2pt(0.7mm)以上の塗り
- 抜きは4pt(1.4mm)以上の余白
- 文字は、漢字の太字が12pt、細字が10pt、アルファベットが9pt以上
- 色と色が接するデザインは、上の目安の倍以上
キャンバス生地では、これより余裕のある設定を。
黒や原色系でない薄い色で刷る時は、できる限り大きく作ってください。
あくまで目安で、鮮明さを保証する数字ではありません。印刷デザインデータ作成の目安のページもあわせてご覧ください。
仕上がりを先に確かめるなら、試作プリントオプションを。
染色プリントをカラーで使う場合は、基本的に試作での事前確認をお願いしています。
確認の方法は2つ。写真画像をメールで受け取るか、現物を受け取るか。
本生産(10枚以上)を前提にした制度で、納期が足りない時は使えません。
薄い色のベタ塗りがあるデザインは、一度試作を。
染色プリントの仕上がりは、デザインデータに大きく左右されます。
届いたバッグにはプレス跡が残っていますが、時間の経過で薄くなり、スチームや洗濯で取れるもの。オーダー規約に書いている点です。
9. まとめ
染色プリントの染料は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色。白は入っていません。
白の役をするのは生地の色で、生成りのバッグなら白は生成りに。
薄い色ほど生地が見え、濃い色の生地では染料が打ち消されます。
白を刷りたい時や、濃い色の生地を使いたい時は、シルクプリントか転写プリントへ。
色数の多いデザインを、生成りや淡い色の生地に少量から。そういう時が染色プリントの出番です。
どの方式が合うかは、デザインと生地の色、枚数しだい。
お見積りにデザインを添えていただければ、こちらから合う方法をご提案します。
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